G軍曹の書斎

小説です。

第二話

時刻は12時となった。

鳩ならぬニワトリ時計が騒がしく時刻を告げる。

「ブルーアイズさん、まだだいぶ時間ありますよ・・・。食べ放題にも行けたんじゃないですか・・・」

不満そうな顔をしてそうボヤくのはリニアである。

青髪と金髪のコンビはちょうど今昼食を済ませて帰ってきたところだ。

「食べ放題にも・・・ってお前は一体どんだけ食うんだ・・・」

呆れた顔でブルーアイズはそういった。

 

「まぁ確かに早く戻りすぎたな・・・どうするか」

例の騎士長の取り調べは二時から、まだ二時間余裕がある。

しばらく支部内をほっつき歩いてみるか...ブルーアイズがそう思った時だった。

 

「あ、そうそノラム、...ちょっとお願いがあるんだけど」

 

どこかで聞いたことがある声と名前が聞こえた。

直後目の前を一組の男女が通り過ぎる。

男の方は気だるそうな、女の方はやけにしっかりした美人。

ブルーアイズはこの二人を知っていた。

 

「お、ノラムとピア二じゃないか?」

 

ノラム、そしてピアニ、彼らもまた広い意味で国際警察のメンバーである。実際は裏で隠密に操作を行う諜報員的な立ち位置で、ブルーアイズ達の表向きの顔での部下に当たる。

というわけで、よほどの極秘任務を行っていないときはたまにこの二人と遭遇する。

 

ブルーアイズの呼びかけに黒髪の少女、ピアニはびくっと肩を震わせる。

驚いた拍子に舌も噛んでしまったらしい。

それを聞いてリニアも二人に気づく。

 

「えーっと・・・誰だっけ・・・?」

白髪の青年、ノラムは少し気だるそうにそういった。

「え、おまe((」

「ひょひょひょっとあんたしつれいふぎるいふjyaniaus・・・」

ブルーアイズが言葉を発すると同時にピアニは慌ててノラムに言葉を浴びせる。

慌てているのと舌をかんだのとで発した単語は全く聞き取れなかった。

 

ピアニにあれこれ言われたノラムは少し何かを考えるようにした後、あきらめたように顔を上げた。

 

「お、お名前はなんていうんすかね?」

 

如何せんハードに問題があるようだ。ブルーアイズはそう思った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今一度自己紹介をしてやるも、まだノラムは思い出せないようであった。

「・・・で、そのエリート様が何の御用っすか」

 

ブルーアイズはニヤリと笑う。

彼にはすでに大体の見当がついていた。

 

 

 

 

 

お久しぶりです。

 

どうも、お久しぶりです。Gです。

一体何人方がこのブログを見てくださっているのか、存在しないのではないか、そんな思いを抱きながら久しぶりに文章を打ち込んでおります。

 

さて、このブログでは以前「Remove」とか何とかいう小説を載せておりました。

この小説は中学時代に友人のそめちめ(@sometime1209)と「一緒に物語を作ろうぜ!」的なノリで書き始めた、黒い歴史を背負った物語であります。一応そめちめが書いている小説とリンクする使用になっています。

 

なぜ今頃そんな話を掘り出したかというと、ようやく受験勉強が終わり余裕ができ、久しぶりに続きを書こうかと思ったからなのです。(先日友人たちと集まった時にも話に出たのです)

 

ただ、ただです。

読み返してみるとだいぶキツイ黒歴史的な意味で)

 

前にも述べている通り、これは黒歴史なのです。(SANチェックd100

 

 

加えて先日の片づけで昔書いたプロットが焼失しました。

やっちまった。

いや、逆に救われたのか・・・?

いやいやいやいや。

 

果たしてこの物語の運命や一体・・・。

 

まぁ、書くことに変わりわないんですけどね続きを。

 

じゃあなんでこんな風に書いているのか、と言われればまあ「決意表明」と答えるほかありません。

 

まぁ見る人がいない場所でやる決意表明に意味があるのかを聞かれたら、何も言えません。再不斬の最後のシーンみたいになることでしょう。

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とにもかくにも、私が言いたいことは「小説を再開する」ということです。

もし読んでくれるよという方がいたら、ぜひお付き合いください。

よろしくお願いします。

 

 

 

 

第一話「ハルクード共和国」

その国、ハルクード共和国はディザスター地方北部に位置する科学が発達した国家である。沿岸部にあり、交通などの整備が整っているため、大企業の本社や国際機関の支部が多く存在する。
また、この国はディザスター地方竜巻多発帯に属する国だ。
故に竜巻はおろか、最近では他の異常気象にまで対抗できる技術を持っている。
まとめると、この国は天気に強いのだ。

先日、ディザスター王国で起こった事件の主犯として逮捕された男、シャイン元騎士長はこの国の警察病院に収容された。
ようやく話ができるまで回復した、と病院から連絡があったので、事件を担当した二人が取り調べのためにやって来た。
リニアとブルーアイズである。

二人は今、国際警察支部に向かって歩いているところである。

ブルーアイズ「ルーンホテルの一室がガス爆発、5名の死亡...廃工場にて大火災、中にいた15名死亡...最近よく人が死ぬな」
ブルーアイズはコンビニで購入した新聞を見ながら歩いている。その横でリニアはメロンパンを齧っている。
リニア「ながら新聞は危ないでふよ」
メロンパンを口に入れながらリニアは言った。
ブルーアイズ「お前だって歩きながら食べるのは行儀悪いぞ!」
そういいながら、ブルーアイズはリニアの口にメロンパンを押し付ける。
リニア「メロンパンおいしぃ...じゃなくて着きましたよ国際警察ハルクード支部」
駅から徒歩五分。
二人の前には、立ち並ぶビル群の中でもひときわ目立つ高層ビル、「国際警察ディザスター地方ハルクード支部」が立っていた。
リニア「なんか凄い丈夫そうですね」
前にも言ったように、この国の建造物は竜巻などの被害を受けないように強化されている。
ブルーアイズ「取り調べは何時からだっけ?」
リニア「2時からですよ」
時刻は午前11時を指している。
予定まであと3時間。
ブルーアイズ「荷物置いたら何か食べに行こうぜ」
昼時のせいか、辺りには売店が立ち並び賑わいを見せている。
リニア「そうですね」


二人はそう言うとビルの中へ姿を消して行った。


「あいつらが仲間を殺したのか?」

ーーービルの間から二人を眺めていた男が言った。

『えぇ。そうです』

男の持っている携帯からまた別の声が聞こえた。どうやら通話をしているらしい。

「そうか」

男はそう言うと、路地裏に消えて行った。


ハルクード共和国を生暖かい風が吹き抜けた。


二章 「プロローグ」

ディザスター地方上空に一機の飛行機が飛んでいた。機体は黒く塗装されており、エンジンに消音処理をしてあるのか静かに飛行している。
時折、雲の間から顔を覗かせる月の光を飛行機は怪しげに反射する。

『あと5分程でポイントに到達します』
機体の中でスピーカーを通じて、アナウンスが流れた。そのアナウンスで中で座席に座って居た男達が準備を始める。
「ねぇ、本当にそんな格好で降りんの?」
同じ機体に乗っていた一人の女が言った。女は座席で足を組みながら、音楽を聞いている。全体的にラフな格好で、髪は一部を赤く染めている少し場違いな女だ。
「恥ずかしくないの?そのランドセル...」
女は更に付け加えた。
女が言っている格好とは全身を耐衝撃スーツに黒いランドセルの様な物を背負った格好のことである。
「これはランドセルではありません。降下補助装置です」男の一人が反論する。
「恥ずかしくはないです」
「でも、降りるだけならパラシュートでいいじゃん」
「この装置は高速落下と正確な着地を可能にした最新のものなんです。パラシュートなどとは比べられませんっ!」
女の言葉にスーツの男は食ってかかる。
「すごいんです」
一方女はへ〜、といった様子で座席に寝転がっている。その手にはP.Pが握られていた。
「熱弁中悪いんだけどさぁ、ポイントだよ」
そう言って女は後方を指差す。
大型のハッチが開き始めていた。
『降下ポイントです』
機内に再びアナウンスが流れた。
耐スーツの男達は今一度身なりを確認すると、ハッチの前に並んだ。
「それでは只今よりミッションを開始する」
スーツの男達の中で、リーダーらしき存在が言った。
「第三部隊、降下開始!」
その言葉を合図に、男達は次々とハッチから飛び降りる。
「展開!」
直後に男達の背負ったランドセル(降下補助装置)が開き中から羽が出現した。
カラスのような羽である。
そして装置に着いていたエンジンに火が灯ると部隊は闇の中に消えた。
「...あれ本当に着陸できんのかな...」
ハッチから下を見下ろしながら女は呟く。
「さてと、私も行くかね」
そう言うと、女は一歩前に踏み出す。
機体から飛び出した女は、猛スピードで急降下していく。
「うひょぉぉおおおおお‼︎」
夜空に女の声が響く。
その間も急降下は続く。
女は着陸補助装置はおろか、パラシュートもつけていない。
このままだと確実に女は死ぬ。
しかし、そんなことは気にしていない、というように女は両手を広げた。
その両手から赤い光が放たれる。

炎だ。

炎は徐々に火力を増していく。
「3....2...1...‼︎」
次の瞬間、女の両手から火の玉が放たれる。
それは放たれるや否や、爆発した。
豪ッ...!!!という音と共に爆風が周りに広がる。
女はその爆風で急降下のスピードを緩めると、とあるホテルの窓辺に降り立った。
部屋の中にはビジネススーツを身にまとった4人の男が呆然と立ち尽くしている。
「ちょいと派手だったか...な...」
そう言いながら、女は視線を男たちに戻す。

「さぁ、始めますか」
女は不敵な笑みを浮かべた。
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炎が 窓を貫いたのはそれから間も無くのことだった。






ディザスター王国最終章 「箱庭のお姫様」

「ここです」
王妃はそう言うと、木の扉を前に押した。
少し大きめな木の扉が音を立てながら開く。
ドアの向こうには、広い空間が広がっていた。
予想以上よりも遥かに物が少ない、というか国庫にしては明らかに物が少ない。
「国宝などは美術館に保存してあります。こんなところではカビが生えてしまいますのでね」
ブルーアイズの心を見透かしたように王妃は言った。
「こっちです」
ブルーアイズは王室の案内でさらに奥へと進む。
細い通路を抜けた先にはずらりと本棚が並んでいた。しかし、ここもかなりのスペースが空いている。
「意外と本が少ないな...」
ブルーアイズは思わず溢した。直後にはっと王妃の方を向いた。
そんなブルーアイズを見た王妃はニッコリと笑って「昔はたくさんあったんです」と言った。
「ここの本の大半は国連の方々が研究のために持っていかれたので、本が減ってしまったのです」
「へぇ...、そんなこともしていたんですか」
「まぁ、こっそり隠していた重要書物があるんですけどね」
「え」
「これです。魔女について書かれた数少ない書物...」
(俺も国連の人間なんだけど大丈夫かな...?)
少し心配になったブルーアイズだが、気にせず本を開く。
「では私は戻りますね。終わったらそこに騎士がいますので」
「はい分かりました」
案内を終えた王妃は王室へ戻っていった。
それを見届けると、魔女の記述を探す。

それはすぐに見つかった。



   『第二十二項  魔女の力』
---魔女の力とはかつて天より現れたとされる七人の魔法使いの血統により受け継がれる魔力に対する素質のことである。ここディザスター王国においては第三の魔女「イース」の血統によってその力が受け継がれる。
この力を持つことで、大半の魔法を使いこなすことができる。また、体内に保有する魔力が多いため大規模な魔法の発動源にもなり得る。
しかし、保有する魔力や特別な素質は使い方を間違えると世界に大災害を引き起こす恐れがある。
また、体内の魔力が暴走することでも同じことが言えるだろう。
実際過去に魔力の暴走が起こったときには半径100mがえぐり取られたという例がある。
魔力の暴走については継承者の精神と肉体が安定していれば起こることはないだろう。

さて、魔女の力はどのように継承されるのか。
それは継承者の生命力が弱くなった時に、継承者の意思によって継承される。
また、場合によっては生まれた時から魔女の力を持つ場合もある。

第三の魔女「イース」は伝承によれば銀髪の女性であったらしい。
彼女は治療魔法に特化した魔女であった。

魔女の力は例え途絶えても、何らかの形で残るとされている。
魔女の力は正しい使い方をしなければならない ---




一通り読み終えたブルーアイズは本を閉じた。
思えばリニアをかなり待たせてしまっている。
ブルーアイズは本をもとあった場所にしまう。
「さてと」
そう言うと彼は大きく伸びをした。
「ん?」
ふとブルーアイズは棚の上の箱を見つけた。オルゴールだろうか?
引き寄せられるように箱に近づく。
「なんだろう」
金具を外して箱を開けるとそれは眩い光を発した。
「?」
光はブルーアイズの体を包む。
(魔法でできたおもちゃか何かか?)
再び箱を閉じると、光は消えた。
「なんだったんだろう」
一瞬調べたい衝動に駆られたが、リニアを待たせていることを思い出す。
「また今度にするか」
そういうと彼は国庫を後にした。



---城の外へ出たブルーアイズはリニアを探す。かれこれ二時間くらい経ってしまっただろうか......。

「あ」

ブルーアイズはベンチで眠る、少女を見つける。無論リニアである。

リニアは暖かな太陽の日差しの下、スヤスヤと眠っていた。膝下には猫もいる。

「いやぁ、お待たせ」

「にゃー」

「お前じゃねーよ」

そう言うと、ブルーアイズは猫の鼻をえいっと押した。猫は「フニャッ」という声を出す。

「...ん...? あ、終わったんれすか」

「おう、お待たせ」

目を覚ましたリニアは大きく伸びをすると、膝下の猫を退ける。そして横にかけて置いた花をブルーアイズに渡した。

「じゃあ、もう行くんですね」

「そうだな」

そう言ってブルーアイズが城門の方へ向いた時だった。二人は揃って「あ」と声を発する。

二人の目の先には、銀髪の少女、シャーラ・ディザスターが歩いていた。背中には大きな荷物を背負っている。

(あ、ゲロガール...)

(あ、アフロボンバー...)

二人がとんでもなく失礼なことを思いながら彼女を見ていると、ドレスの裾に何かが引っかかったのか、バランスを崩し、盛大に転んだ。その反動で、荷物の一部が二人の方へ飛んでくる。

そして、ブルーアイズがそれをキャッチした。

「...これって...藁人形だよな...」

「ですね......」

予想外の展開に顔を見合わせる二人だったが、すぐにシャーラ姫の事を思い出し、駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

ブルーアイズがそう声を掛けると、地面に倒れ、痛みにワナワナしていたアホ毛姫は顔を上げた。

「あ、昨日の警察の方々...はっ!、失礼しました!」

そう言うと、姫はガバッと起き上がり服についた土を払う。そして、手に持っていた荷物を地面に置いた。

「先日はありがとうございました」そう言うと、深くお辞儀をした。

「いえいえ」とブルーアイズは言った。

シャーラ姫は顔を上げると、隣にいたリニアに気づく。

「あ、あなたは城下町の...」

そこでシャーラは言葉を切る。

なんだ知り合いか?、などとブルーアイズは思っていると横でリニアがぎこちない笑みを浮かべていた。何かあった顔だ、とブルーアイズは思う。

「こ、この前はごめんなさい...少しやりすぎてしまって...」

「い、いや大丈夫です!いい経験になりましたから!」

シャーラ姫も、引きつった笑みを浮かべながら言う。

(いい経験...なのだろうか...?)

リニアは心の中で申し訳ない気持ちになった。ブルーアイズも何かを察したのか微妙な笑みを浮かべていた。

「あ、そういえばこれ落としましたよ」

そう言ってブルーアイズは先程の藁人形を渡す。

「あ、すいません!ありがとうございます」

とシャーラ姫は丁寧に受け取った。

「これはお父様が『人に幸せを呼ぶアイテム』といってくださったものなんです」

シャーラ姫はそう言った。「なかなか効果は出ないんですけどね」、と付け足す。

(そりゃそうだろう、他人を呪う道具だからな)

とブルーアイズは心の中でツッコミを入れる。リニアはリニアで笑いをこらえている。

「そういえば、旅に出られるそうですね」

「はいっ!そうなんです!」

シャーラ姫は興奮した面持ちで答えた。その瞳には微かだが星の形が見えた気がした。

「世界は広いですからね、楽しんできてください」

「それと」、そう言ってブルーアイズは花束を差し出す。

「これはそのお祝いってことで、どうぞ」

「ありがとうございます!」

シャーラ姫は両手で花束を受け取るとそう言った。

「これは何というお花なのですか?」

ストケシア、といいます。シャーラ姫にピッタリでしたので」

そうブルーアイズが言うと、シャーラ姫はしみじみと花を眺めた。

すると、はっと思い帰ったように顔を上げた。

「はっそうでした!そろそろ行かないと!フォル君が待ってるんでした!」

そう言うと、彼女は改まり、

「今日はありがとうございました。あと、花も...。またどこかで会いましょう」

そう言うと一礼し、荷物を背負って城門へと走っていった。二人は、シャーラ姫が走って行くのを見送る。

「可愛らしい人でしたね」

そうリニアが言った。

「そうだな」

とブルーアイズは答える。

シャーラ姫が城門を抜けると、長身のコートの少年が現れた。城下町で見た少年だ。ブルーアイズへ直感的にその少年から何かを感じた。

「やっぱ何かありそうだな」

「何か言いました?」

少し前に居たリニアが振り向いた。

「いや、なんでもないよ」ブルーアイズは言う。

「じゃあ俺たちも行こうか」

二人はゆっくりと城門へ歩いていく。

太陽は優しく城を照らしている。

「そういえば、さっきの花ってどんな意味があるんですか?」

「ああ、あれはだな、花言葉がな...」


二人を優しく運ぶように、そして姫の旅立ちを祝うように、一筋の風が走り抜ける。


このディザスター王国に背を向けて。


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(ディザスター王国編 完)



「ディザスター王国⑩ 魔女の血統」

彼はおもむろにドアを叩いた。コンコン、という音が廊下に響く。
「どうぞ、入りなさい」
低いが、どこか優しさを感じる声が中から聞こえた。
「失礼します」
彼はそう言うと、ドアを開けて中に入った。

ドアの向こうには広い空間が広がっていた。
ゲームで目にするような赤い絨毯が真ん中に敷かれており、両サイドには幾つか椅子が並べられている。

「私の名は、『レント・ディザスター』。知っているとは思うがこの国の王だ。どうぞよろしく」
髭を生やした王はそういうと冠を脱いだ。
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王の後ろには教会の十字架のように、剣が飾られている。
その剣には幾つもの魔法陣が書かれていた。
「初めまして。私は『クレシャ・ディザスター』です。娘がお世話になりました」
そう言ったのは王の傍に座る王妃。銀髪の髪を持った美しい姿は、やはりシャーラ姫に似ていた。
王妃は軽く礼をすると、ブルーアイズも礼をした。
「国際警察から来ました。ブルーアイズと申します。昨日の件についての報告に参りました」
と、ブルーアイズは使い慣れない敬語で言った。
やはり普段使っていないとこういった時に不安になってしまう。
そのことを彼は少し後悔した。
「そう硬くならなくても大丈夫だ。敬語だと大変だろう、私も最近使ってないからな」
ハハハハッ、と王は笑う。
それに合わせて「あはは」とブルーアイズはぎこちない笑みを浮かべる。
「ではお言葉に甘えて...。報告etcをさせてもらいますね」
ブルーアイズは事件の詳細を話した。


---15分程たった。
「事件の詳細は以上です」
そういってブルーアイズは話を終えた。

ずっと耳を傾けていた王は少し悲しそうな顔をしていた。
ずっと信頼していた騎士長が姫を狙ったのだ。無理もない。
愛国心は時として間違った方向に進んでしまうものである。

「あ、そうだ」
ブルーアイズは思い出したように顔を上げた。
「あの最初に報告した事件なんですが、少しばかり損害が出てしまいまして...」
(少しじゃないけどな)と心の中で付け足しながら彼は言った。
「賠償の請求は本部にしていただければお支払いしますので」
「例えばどんなものが壊れたんだい?」
言葉を切ったところで、王が質問してきた。
「えっ〜と...、壁とか壁とか道ですね...すみません...」
ブルーアイズは申し訳なさそうに言う。

「それは良かった」

王の言葉は予想外のものだった。
あれ?、とブルーアイズは心の中で首を傾げる。
「良かったとは...?」
「ああ、このディザスターの建物はほとんどを魔法で作られているんだ。だから少しくらい破壊されても、自動的に修復されるんだよ」
そう王は言った。
「災害が多い国ですから、そういったところはしっかりしているんですよ」
王妃が横から付け足した。
「え?じゃああの分厚い壁も...」
「もちろん」
王はドヤ顔でそう言った。
(凄い....流石ディザスター......)


「ところでブルーアイズ君。騎士長は今どうなっているんだい?」
王はそう質問した。騎士長...昨夜の事件の主犯である、シャインである。
「その方ならハルクード国の警察病院で治療中です」
ブルーアイズは答えた。
フォルという少年によって運ばれたシャインは、全身打撲の意識がもうろうとしている状態であったため軽く取り調べをした後、精密検査のために運び込まれたのだった。
現在療養中である。
(原因は魔法によって吹き飛ばされたんだっけ...?)
確かそんな感じだった気がする。
そこでふとブルーアイズはあることに気が付いた。

今日はまだシャーラ姫を見ていない。
「そういえば、シャーラ姫は大丈夫でしたか?」
ブルーアイズは聞いてみた。
「大丈夫だったよ。シャーラは今、部屋で荷物をまとめているかな...どうだっけ?」
王は王妃に聞く。
「確かあの少年と買い出しが何かに出かけて行きましたよ」
ブルーアイズは二人の会話の内容をうまく掴むことができなかった。
「えっ....と...準備って?」
「ああ、シャーラを旅に出すことにしたのだよ」
王は真顔でそう言った。
「え....?旅とはまた突然ですね....一人ですか?」
「いいや、違うよ」
「ですよね、流石に国の騎士とかと行きますよね」
「まぁそうなんだが、国の兵士とじゃないよ」
「え?」
「あの少年さ。あの少年に連れて行ってもらう事にしたんだ」
「は?」
ブルーアイズは思わず声を漏らした。衝撃が強すぎて情報が頭からは取り出せない。
「少年って、コートの怪しい?」
ブルーアイズの質問に王は「そうだよ」と言って頷く。
いよいよ王家が何を考えてるのかわからなくなってきた。
(昨日まで箱に詰まってた少女をいきなり紙ヒコーキに乗せて飛ばすのか!?こいつら...)
既に彼の頭から、敬意という概念は消えていた。
「な、何でまた見ず知らずの少年と、しかも二人きりで旅へ?」
「まぁ可愛い子には旅をさせろって言うじゃないか、それに...なぁ?」
王はニヤリと笑う。
「そりゃあ...ですよね...」
続けて王妃の笑った。
三人の間に変な空気が流れる。
ブルーアイズは背中を変な汗が伝って行くのを感じだった。
「そ、それは?」
勇気と力を振り絞り、彼は質問した。
「そりゃあ、もうすぐ孫ができるかも知れないからだよ。ほら、よくドラマとかであるだろ?」
王は会心のニヤつき顏でそう言った。傍らの王妃も「ですね」といって笑う。
(こいつら...娘以上に世間知らずかも知れねぇ...それに昼ドラの影響力がここまでとは......)
昼ドラでよくあるシーンといっても王は「駆け落ち」の事を言っているのだろうか。
それなら王が容認した時点で既に破綻しているのだが...。
ブルーアイズは頭痛を感じながら二人(バカ親)の方を向いた。
「王の決断なんで別に構わないのですが、もしもの時はどうするのですか?」
「あの二人なら大丈夫さ、私の勘がそう言っている」
王はそう言った。無論ブルーアイズに信じるつもりはない。
「それでも、です。今回の事件もシャーラ姫が宿す力が原因だとか...」
ブルーアイズは聞く。
「シャーラには確かに魔女の力が宿っている。それは時に危険なものだ。でもな...」
王は言葉を切った。
「それを理由にこれ以上城に閉じ込めるというようなことはしたくないんだよ。例え何かを宿してて、それが危ない物だとしても、普通の人と同じように世界を見つめて欲しいんだ......」
王は外を見つめながら言った。窓から差す日の光が王の顔を僅かに照らす。
ブルーアイズにも王が言いたいことがわかった。

「ところで、魔女の力とは一体なんなんですか?」
ブルーアイズは質問した。この疑問は昨日の調査の時からあった。
魔女の力...聞いたことのない力である。
「うーん...簡単に言うとな、素質みたいなものだ。詳しく知りたいなら国庫の本を見て行くといい、確か魔女の力についての記述がどこかに残っているはずだ」
王は言った。
(こここ国庫!?コッココッコォ国庫!?)
ブルーアイズは驚く。
入って大丈夫なんですか?、というツッコミはこの際どうでもいい。
「いいんですか!?本当に?」
ブルーアイズは必死に興奮を隠しながら言った。
実は歴史とか古書とかに興味があるブルーアイズである。
「ノープロブレムだ」
親指を立ててキメ顔をした王に「お願いします!」と彼は言った。
「じゃあクレシャ、案内してやってくれ」
「わかりました、こちらです」

こうしてブルーアイズは王室を後にして、国庫へ向かったのだった。







*この物語はそめちめの話と同世界で進む別ストーリーです。
    今回は長かったですが、次回も長いかもしれないです。








「ディザスター王国 ⑨」

あの事件から一夜が明けた。ディザスター王国にいつもと変わらない朝がやってくる。

外から聞こえてくた人々の声でブルーアイズは目を覚ました。時刻は午後10時。
傍らではリニアがスヤスヤと寝息を立てている。
一瞬その状況に違和感を覚えたブルーアイズだったが、取り敢えずベットから起き上がった。
昨日の労働のせいで体全体にまだ疲れが残っている。リニアもそのせいか、全く起きる気配がない。

昨日の戦闘...マントの男たちとの戦闘を終えたブルーアイズ達は、その後に急遽城へ呼び出されたのだった。要件は確か「王女誘拐事件」の犯人の取り調べ(だったと思う)。
一応国際警察である彼らもその事件を手伝わされたのだったが、ボロボロの騎士長(犯人)の取り調べや、...っぱいタンk...じやない、被害者のお姫様の事情聴取、現場の確認と、面倒な仕事のオンパレードだったのでいつも以上に疲労が溜まったのだった。
特に騎士長の取り調べはやたらと時間を食った。

そういったことがあったおかげで、本来すべき男達の戦闘で出した損害の報告ができなかったのである。故にどんなに疲れていても再び城へ行かなくてはならないのだ。
ブルーアイズはささっと顔を洗うと、上着を羽織って外へ出る。
一回大きく伸びをした後、城へ向かって歩き出した。

--- 五分くらい歩いた時だった。
不意に吹いた風が甘い香りを運んできた。
(何の香りだろう)
そう思いキョロキョロしていると、花屋が視界に入った。
(ま、多少の寄り道なら大丈夫だろう)
そう思ったブルーアイズは躊躇いもせずに花屋へ入って行った。

「いらっしゃいませ」
コスモスの髪留めをした美人の店員さんが明るい笑顔でそう言った。
ブルーアイズも軽く会釈をする。
店内は思っていたよりも広く、たくさんの種類の花が売られていた。
それぞれの花の容器のプレートに名前と花言葉が書いてある。
コスモス...調和、トリカブト...騎士道、ポインセチア...私の心は燃えている…。
いろいろな花を見て回っていると、目の端に青い丸い花が入った。
吸い寄せられるように彼は花に近づく。
(なんて名前だろう)
そう思い、プレートを探す。
しかし、この花の容器には付いていなかった。

「その花はストケシアっていうんですよ」
声に驚き振り向くと、先ほどの店員さんが立っていた。
ふふふっ、と笑った後、「お探し物はこれですね」といってプレートを置いて行った。
ブルーアイズはそのプレートに目を通すと、軽く笑みを浮かべた。
「これ、貰えますか?」


------ ブルーアイズが花屋に入った頃、リニアは目を覚ました。
人気がないことから今日も置いていかれたことを察した。
しかし、今日はどこへ行ったのかだいたいは検討がつく。
「別に起こしてくれていいのになぁ」そう呟きながらリニアは起き上がった。
自分が寝言で何を言っているのか知る由もない。
「走れば追いつくかな」
支度を終えたリニアはそうつぶやくと、部屋を後にした。



------ 話はブルーアイズに戻る。
花屋で4.5分時間を潰したブルーアイズは城門の前に来ていた。
入り口のところで入城手続きをとる。
すると、腰のあたりにビリッビリッという刺激が走った。
一瞬腰痛を疑ったが、どうやら違うらしい。
手足が何故か動かない。
(痺れてる.......!?)
喋ろうとして口を動かすと、「あがっ」という声が漏れた。
すると、痺れがなくなった。
振り返るとそこには予想通り、リニアが立っていた。
「また、置いて行くなんて...しかもお城に入れるいい機会に......」
リニアはむすっとしながら言った。
「別に悪気は無かったんだ」
そうブルーアイズは言い訳した。

そうこうしているうちに城門が開く。

「どうぞ」
入り口の騎士が言った。



--- 城の中は曲線の道と、直線の道が幾つも通った変わった風景が広がっていた。
雰囲気はまさしく「お城」であった。
「すごいですね...」
「そうだな...」
二人は言葉を漏らした。

少し進むと、今度は城の入り口が見えてきた。
もうすぐお昼であるせいか、兵士が集まっている。
(こういうところは災害の国とは思えないよね)
ブルーアイズはふと思う。横にいるリニアはリニアで城のあちこちを見物している。
「王室はこちらです」
見物に気を取られていたブルーアイズは、その一言で現実に戻る。
そこには磨き上げられた鎧をまとった騎士がいた。騎士が示す方向には、厳格な雰囲気漂うそろらしい扉があった。
ブルーアイズが確認したことを見ると記事は自分の持ち場へ戻っていく。
「じゃあこれ持ってて。行ってくる」
そういうと彼は花束をリニアに渡す。
「花束...ですか、わかりました。その辺で待ってますね」
そういうと、リニアは入り口へ走っていく。
ブルーアイズもそれを見送った。

「さて、俺も行きますかね」
そういうとブルーアイズもまた扉へ向かって歩き出したのだった。