G軍曹の書斎

小説です。

「影 (ディザスター王国 ⑧) 」

「司祭様、こんな感じでいいですか?」
とあるホテルの一室でスナイパーライフル片手に男は言った。
高級ホテルにいたあの男である(4.5話参照)。
その後ろには、ワナワナと震える女性がいた。
その名は「アリエル」という。

「お、お前...!!誰が殺せって言ったよ!?これじゃあRemoveさんの持ってる能力がわからないじゃん!!」
「あ」
男は声を漏らす。笑顔で。

「ったくもう......まぁもう片っぽは観れたからよかったけど」
アリエルはソファーに腰を下ろす。
それを見た男は笑顔で銃の片付けを始める。
「そういえば司祭様、生きてる方の雇ってた奴を助けなくていいんですか?」
思い出したように男は言った。
生きてる奴...マントの男のことである。

「ああー、Remove自体暗殺を主としてやってる組織だからもう殺されてるだろうよ。仮に生きてたとして漏らされて困るような情報は持ってないはずだしー」
「面倒臭い・疲れた」を体全体で表しながらアリエルは答えた。

「じゃあ、あの偽情報を渡した屈強な騎士さんは?」
「んー、フエラムネが魔女の力云々を教えてあげた奴かー。どうなったっけ?」
フエラムネとは、同じ組織に属する一人の人間のことである。
見開いた感情のない目に、口にはフエラムネをいつも咥えているため、彼女はそう呼んでいる。

「確か、この国のお姫様の近くにいたあの少年が倒しました」
「あぁ、『ドラゴニュート』か」
アリエルはソファーに寝転がった。
その顔は眠たそうである。
「話には聞いたことがあったが、実際にいるとはなぁ...、それにフエラムネが調べてたのってそいつだったんだなぁ」
情報の漏洩云々を防ぐために、そういった情報のやり取りは必要最小限に抑えられている。
最も、彼女ほどの立場の人間なら簡単に知ることは出来るのだが。
「え?」
男は振り返る。
「あ、独り言」



男はバラバラにしたスナイパーライフルの最後のパーツをケースにしまう。
どうやら男は銃を片付け終わったようだ。

「どうします?司祭様?」
「少し寝たーい、眠ーい......」
「お供します♥︎」
男がソファーにダイブしようとした時だった。

バァン!!!、破裂音が響いた。
直後に「どふぅっ!!」という断末魔が室内に響く。

今度は天井に男がめり込んでいた。
「やはりお前の前では眠れん、行くぞ」
アリエルは言った。
「らbka&vgs@ふ(了解です)」
男は天井から降りる(落ちる)と笑顔で立ち上がる。


「次はどちらへ?」
「とりあえず戻ろう」


そう言い残し、彼らは消えた。





*この物語はそめちめの書く物語と同じ世界で進む物語です。
    次回は多分最終回です。



「ディザスター王国 ⑦」

リニアがマントの男と戦っている頃、ブルーアイズは城の前に一人立っていた。
一旦リニアと二手に分かれて国境付近に向かったブルーアイズだったが、特に何も無かったので戻ってきてしまったのだった。
かれこれ30分くらいは経っただろうか...、ブルーアイズは夜空を見上げる。
お家大好き主義のディザスターの人は早いうちに家に入ってしまうため、この国には街灯が少ない。
全くないわけではないが、必要最低限しか取り付けられていないようだ。
それが功を奏してか、この街の夜空は星で溢れている。

ブルーアイズは近くのベンチに腰を下ろした。
「リニアの方は見つけたかな?」
そう言うと、ポケットから「P.P」を取り出す。
アドレス帳からリニアの番号を呼び出すと、発信をタッチした。
風の音もない、完璧な静寂が支配していた空間に「P.P」の呼びたし音が一定の感覚で響く。
10コール程繰り返すと呼び出し音は止まる。
「『おかけになった電話番号に繋ぐことができませんでした。(エラーコードc2)』」
感情のこもらない案内音声とともに画面にはエラーコードやらなにやらが表示された。
どうやら、リニアは「P.P」に気づかなかったようだ。
もしかしたら宿に忘れたのかもしれないが...。

(あいつ......準備万端って言ってたよな......)
仕方がないのでブルーアイズはそれをポケットにしまう。
ため息をついた。
「ターゲットはお姫様を狙ってるもんだと踏んでいたが.....何も起こんないなー」
ブルーアイズは呟いた。
しかし、ブルーアイズはふと思った。
(そういえば、今お姫様を狙う意味はあるのか?)
よく考えてみれば、追われて逃げている最中に誘拐をするのはリスクが大きい。
誘拐に成功する可能性も低くなるし、何より逃走経路の確保が難しいからだ。
お姫様を人質にして逃走するにしても、それなら国民を何百か人質に取った方が楽なのではないか。

なら考えられる可能性は一つ。

最初から目的があってここに来た。

(俺たちは国境付近で奴を見つけて追いかけてきた、なら最初からここに来ようとしてたとしても......)
さらにブルーアイズは考える。
(確かこの国は魔女の国だったな...ならお姫様が『力』を持っていてもおかしくはないか.....)
ブルーアイズは城を見上げた。
その時だった。
彼の視界を黒い影が横切る。
(!?)

ドスッ...!!、直後に鈍い音が響いた。
「イッテーな...っくたあのクソ組織...話が違う...」

ブルーアイズは黒い影が飛んで行った(落ちて行った)方を見た。

そこには「P.P」で見た顔があった。

「あ」
「あ」
二人は声を揃えた。

落ちてきた男は明らかに動揺している。
「て、てめぇ....!!!き、聞いてやがったな!!殺す!ぶっ殺す!!」
男は懐から剣を取り出すとブルーアイズに斬りかかる。

直後戦いの火蓋は切って落とされた。







...というよくある展開も無く、この戦いはたったの5秒で終わった。

「死ねぇぇえええええ!!!!ぐぶァッ.!!!」
ブルーアイズに斬りかかった男は体をくの字に曲げた後、地面に打ち付けられた。
咄嗟の出来事に理解が追いついていない男はハテナマークを頭にいっぱい浮かべている。
そんなことは気にしないブルーアイズは能力を使って男の体を起こす。

「手錠をかけた方がいいのか?これ...」
そういいながらポケットの中で手錠を探す。
「て、てめぇ!!!国警か!!!」
ようやく頭が追いついた男は吠える。
「そうだよー。さぁいろいろ聞かせてもらおうか」
手錠探しを諦めたブルーアイズは男を見下しながら言う。

「ふざけんな!国警なんぞに話すことはない!!」
男がそう言った直後、男の横にあった壁に大きな穴があいた。
衝撃とともに鈍い音が響く。

ブルーアイズが能力を使ったのである。
ディザスター王国の王室魔法で強化された壁、それは普通なら傷がつかない代物だがブルーアイズは顔色一つ変えずに穴を開けた。
「.....え.....」
男は絶句する。
顔は徐々に青ざめはじめ、体は既に震えている。
そんな男を見たブルーアイズは低い声で言う。
「全部話せ」


完全に負けた男は、ブルーアイズの前で正座をしている。
先ほどのような勢いはない。
「で?、目的はなんだったの?」
「お、お姫様の誘拐です...」
ブルーアイズの問いかけにビクビクしながら男は答える。
「何のために誘拐すんの?」
「それはわからいっす、頼まれただけなんで僕たち...」

「で、他のメンバーは?」
「僕と、もう一人は雇われた奴がいるはずです」
俯きながらもしっかり答える男。

「で、お前らの組織はなんて名前だ?」
「え!さ、流石にそれは言えないでぐぶァッ!!」
静かな街にバァンっ!!という音が響いた。
ブルーアイズの拳が容赦無く男を襲う。
「い、言いますから!!(痛い...酷い...)えっと、確か『てぃーじあ(?)』です。ギリシャ語だったと...意味は知りませんが...」
男は言った。
(ギリシャ語でその発音って...『捨て駒』って意味なんだけど.....ま、いっか)

ブルーアイズは続ける。
「じゃあ、最後だけど」
ブルーアイズは一旦言葉を切った。
「この仕事を頼んだ奴らって誰だ?」
「...えっと確かリ、リ、リから始まる名前だった気がするん」
男が名前を言おうとした時だった。

ブルーアイズは背後に殺意いや、それに似た何かを感じた。

ブオオオオオオオン!!!、どこからか音が近づくのを感じた直後だった。
血しぶきが舞う。
「!!!」
ブルーアイズは男に駆け寄る。

正座していた男の胸には銃槍が空いていた。
既に意識は無い。
「ちくしょう!!」
ブルーアイズは銃弾が飛んできたであろう方角を見る。

(ちくしょう!!なぜ気づかなかった!!情報漏洩を防ぐためにいざという時の刺客がいる可能性だって考えられたのに!!)

ブルーアイズは歯ぎしりした。




そんな彼をあざ笑うように、風は再び吹き始めた。



*この物語はそめちめ(@sometime1209)が執筆している物語と同じ世界の物語です。
    今回はいつも以上に文が崩壊している気がします。
    アドバイスとかをもらえると嬉しいです。








「ディザスター王国 ⑥」

赤いものが散った、というのは正確な表現ではない。
実際には赤い「火花」が散ったのである。
それは紛れもなく電気の異能力を持つリニアによるものだ。

リニアは赤い電撃をステッキの側面に当て軌道をそらした隙に横へ飛んで攻撃を回避する。
身を翻しつつ、銃の引き金を引いた。
バンッ...!!、火薬の爆ぜる鈍い音が響く。
弾かれた鉄塊が男の肩に向かって進む。

しかし、鉄塊が男に当たることはなかった。
どんなに撃っても、男に当たると弾かれたように軌道を変えてしまう。
「そんなに無闇に撃たれたら死んじゃうよ?」
男は笑いながら言う。
余裕の笑みを浮かべながら再びステッキを振った。
しかし先ほどのような攻撃とは違い、ステッキの軌道に沿って何やら空間の歪みを生みだした。
鎌鼬(かまいたち)って知ってる?」
鎌鼬とはとある国に伝わる、旋風に乗って人を切り裂く妖怪の名前だ。
近代では旋風の中心に生まれる真空状態が人の皮膚や肉が裂いたと考えられていたが、実際に自然界でそのような事は起こらないとされている。
あくまでも自然界では、だ。
ゴォオオオッ!!!。轟音と共にステッキの軌道に沿って空気が爆発し、大きな旋風が生まれた。
旋風の中心では地面がえぐり取られ、石などの破片が飛び交っている。
鎌鼬って殺傷能力はなかったはずですが......」
リニアはそう言いながら右に回避する。
その横を旋風は通過、背後にあった壁に当たり形を崩す。

しかし、それで終わりではなかった。

壁に当たり分散した風が不自然に一箇所に集まり、かろうじて見える形を作る。
そしてそれは先ほどよりも速い速度でリニアに襲いかかる。
「なんでもありですか!!魔術って!」
声を張って叫びなら電撃を繰り出す。
バリバリバリバリッ!!!
リニアの赤い電撃は対象を真っ直ぐ貫いた。
電撃によって形を崩した対象は再び風に分散する。

物凄い風とともに辺りの窓が一斉に割れた。

それを見た男は愉快そうに口元を緩める。
「形を崩したってなくなったわけじゃないってことはもうわかったよな?」

先ほど分散した風は男の元に集まると再び形を成す。
長い体に細い尻尾、さらには丸い耳。
見た目はそのまんまイタチであった。
違うところといえば爪が普通のイタチより鋭利であるところだろう。
その姿はまさしく「鎌鼬」であった。 

男の周りには複数のイタチいや、鎌鼬が生成される。
目は赤く、体は透明な形を持った魔術。
おそらく攻撃方法からして属性は「風」だろう。

(しかしミスったなぁ......)
リニアは思う。
地上ならどこにでも吹く風を使う男と、電気の異能力を持つリニア。
攻撃範囲が狭いリニアに対し、男は空間全体を攻撃する事が出来る。
その攻撃を電撃で防げるとしても一人では限界がある。
どちらが有利であるかは一目瞭然だ。

しかし。
こんな差に屈してしまうほどRemoveは弱くない。
こんな男に負けるほど、リニアは弱くない。


(きっと弱点と隙があるはず......!!)
リニアは駆け出す。
それに続いて数匹の鎌鼬が飛んでくる。
すかさず急ブレーキをかけ、体重移動を使って拳を叩き込む。
拳がイタチに触れる前に電撃をぶつけた。
バァアン!!!
破裂音とともにイタチは形を崩す。
しかし崩れた形は再び一箇所に集まり、形を作る。
「うーん...これじゃあイタチごっこになりますね......」
(鎌鼬だけに......)
そんなことを考えながらリニアは身を低くし、再び生成された鎌鼬を交わす。

「流石に異能力者でも風が相手だと大変かなぁ?」

男は首を傾けながら言った。
「俺の魔術はねえ、一定空間の中に風を起こすものすごーく単純な魔術なんだよね。しかも太陽放射の余計なエネルギーが夜はないから凄くやりやすいんだよね」
そう言っている間にも、鎌鼬の崩壊と再形成が繰り返される。
「いつまで持つかなぁ?その異能力」
男は既に勝利を確信していた。

その時だった。

ジャラジャラという音と共に複数の何かが光った。

直後に赤い閃光がその一つ一つに当たる。
バンバンバンバンバンバン!!!!!、幾つもの火薬の爆ぜる音が響いた。
男は反射的に近くの障害に身を隠す。
その直後に先ほどまで男が立っていた場所が吹っ飛ぶ。
「くそっ!!なんなんだ一体!!」
男は頭を抱えながら唸る。

もちろんこの攻撃の主はリニアである。
ポケットに入れておいた複数の弾丸をばら撒き、電撃を使って同時に撃つという器用な攻撃で、その弾丸一つ一つがフレミングの磁界の力を受け加速し、且つ弾丸に宿った電流が生み出す磁界をお互いに受け合うのであらゆる方向に拡散する。
威力は高いが持続できないリニアの電撃の弱点を補い、利点を生かした攻撃である。
まぁ言うなれば、「電磁ショットガン」だ。

拡散した弾丸は幾つかの鎌鼬に当たりその形を壊した。
しかし、今度は再形成されることなく完全に消滅する。
他の鎌鼬にも動きがない。

(やっぱり......)
リニアは確信した。
男の言っていた一定空間とは男の目に入る範囲、「視界」であること。
そして鎌鼬は男の指示で動いており、範囲に入っていないと再形成ができないこと。
リニアは笑う。
「やはり、旋風の操作にも限界があるようですね」
銃弾がやみ、再び顔を出した男には焦りの色が見えた。
「ち、ちくしょう!!」
先ほどまでの余裕は消え失せ、男は怒りをあらわにしている。
自爆してくれるかな?、などと思っていたリニアだが期待は外れた。
急に男が大人しくなったのである。
男は手の中のステッキを握りしめる。
「いいさ、俺のとっておきをみせてやるよ」
男はそう吐き捨てるとステッキで月を指し、数回円を描いた。
その動きに合わせ、大気が微かに動き始めた。
やがて円の中心に透明な塊が現れる。
「この魔術は魔力の消費が激しいから使いなかったんだけど......」
透明な塊の中に徐々に渦が生まれる。
「使ってやるよおおおお!!!!」
直後、透明な塊が破裂する。
そして巨大な竜巻を生み出した。
その大きさは、五階だての建物よりも大きい。
さらに、威力も倍増しており地面だけでなく周辺の壁もみるみるうちに破壊されていく。
「....!!!!」
リニアはとっさに走り出す。

魔術というのは大半は自分で術式を考えて使うのだ。
そして魔力が多ければ多いほど、生まれる力も大きくなる。
しかし同時に、魔力が尽きれば魔術師は戦えない。

つまり、これはあの男の一種の賭けであった。

(単なる旋風ならともかく、あの規模となると破壊は難しいな......)
リニアは考える。
基本的に魔術というものは術者が気を失えば(術者の思考が停止すれば)自然消滅する。
そこでリニアの電撃を使えば簡単なのだが、射程距離が短いという問題点がある。
故に近づくことが必要なのだ。
「遊びすぎたな......」
リニアは反省する。
その間も竜巻は街を破壊していく。

さすがにここまでくると、始末書は免れられないだろう。
リニアはこっそりため息をついた。

「逃げ切れるかなぁ?」
男はにやけながら言った。
しかし、流石に疲労したのか座っている。
そして声色を変えて言った。
「死んでもらうぞ」

男が再び杖を振ると、竜巻の進路は少し右に逸れた。
その先には廃品置き場がある。
ガラスなどの破片を吸収して、殺傷能力のアップのでも期待したのだろか。

竜巻が一旦進路を変えた隙にリニアは次の一手を考える。
「最低限意識を反らせれば......」
そう思った時だった。
リニアの視界に筒状の物体が映る。
それは家庭でやるような打ち上げ花火の一種だった。
(打ち上げ花火......!!)
リニアは竜巻を背に花火に駆け寄った。
足で花火を蹴り上げ、左手でそれをキャッチする。
(これなら......)

筒を手にして立つリニアの後ろで再び竜巻がリニアの方に進路を変えた。

同時にリニアも男の方へ走りだす。

赤い火花が散ると手の中の花火に火が付いた。
シュウウウウウウウウウッ!!!。
花火は煙の道を空に描きながらターゲット、男のもとへ飛んでいく。
「RPG!!?」
予想外の攻撃に驚いた男は反射的に横に飛んだ。
次の瞬間、幾つもの火の玉がカラフルな光を放ちながら視界を埋め尽くす。
「花火......!!!」
男はマントを使って火の玉から身を守る。

正確には守ろうとした。

花火に気を取られた男は、猛スピードで接近してきたリニアに気づけなかった。
その一瞬を使い、リニアは一気に拳を叩き込む。
男は肺の中から空気が漏れていくのを感じた。
「ぐぁっ.......」
くの字に曲がった男は道の向こうの噴水に突っ込む。
水しぶきが散った。
「ぐばぁっ...!!!ゲホッゲホッ......」
男は叩きつけられたダメージから辛うじて意識を保つ。しかし竜巻は消えてしまっていた。
「な...なんだよ......話が...違う......」
「あれあれ?先ほどの威勢はどこに行ってしまったんですか?」
立ち込める砂埃の中から金髪の少女、リニアが現れる。
その手には拳銃が握られていた。
躊躇無くそれを男に構える。
「殺さない...んじゃ、な、ないのかよ?」
男の声は震えている。
「国際警察は、人を殺さないんじゃないのか......?、なぁ、こ、殺さないんじゃないのか......?」
そんな男を見て、リニアは薄ら笑いを浮かべる。
「逆に聞きますが、そんなんで治安を維持できると思いますか?」
「え...」
男は固まる。その顔色がみるみる青くなっていく。
「でも、国際警察は確かに人を......」
「確かに国際警察の刑事に意図的に犯人を殺す権利はありません」
「なら......」
「勘違いしてませんか?」
リニアは言う。
「私がいつ、表舞台に立つ国際警察だと言った?」
「え、それって......」
「そうだ」
リニアは言葉を切る。拳銃に弾を装填し再び構える。
「国際警察の暗部、暗殺を主に行う部門」
「や、やめろ....やめて......」
「よく覚えとけ」
引き金に指がかかる。
「うわぁあああああああああ!!」

「Removeだ」

バァンッ!!!
一発の銃声が辺りに響く。

そして再び静寂が辺りを支配した。




*この物語は(以下略)
    今回は、詰め込みまくったせいでいろいろおかしいです。
    なんかおかしなところがあったら指摘していただけると嬉しいです。
    次回はブルブル君の話です。
    ん?ブルブルなんてキャラ気いたことがない?
    ......あ、ブルーアイズか。

   









「ディザスター王国 ⑤」

すがすがしいほど美しい夜空が広がるディザスター王国。
静まり返った街並に、今日は人影があった。
リニアである。
30分ほど前にブルーアイズと二手に別れた後、リニアは城の正面へ向かっていた。
ちなみにブルーアイズは城の裏手にまわっている。

完全に夜になったため、太陽光を軸にした探査魔法の効力は切れてしまっている。
故にここからは自力で探すしかない。

(なるべく早く見つけないと......)
そう思った時だった。
周りの電磁波を乱す不快な感覚がリニアを襲う。
(......!!)
彼女はこの感覚を知っていた。
世界には微弱ながら磁場などが絶えず存在し、あらゆる物体の影響で変化する。
その中でも特に変わった、法則が通じない変化をするものがある。
すなわち魔力。
彼女は過去の経験から、それを感じ取ることができた。

リニアは足を止めて周りを見渡す。
魔力が使われた(リニアが感じ取れるくらいの距離で)ということは敵が行動を始めた証拠である。
しかし敵の影はない。

説明できない感覚が今度は殺意を感じ取った。
すぐさまスカート下から拳銃を抜こうとする。
「動くな」
突然背後から声がした。
銃を抜こうとしていたリニアはいきなりの事に スカートの下に手を入れている状態で止まる。
前方にあった窓ガラスには自分ともう一人、マントの男が映っていた。
その手には細い刃物がついたステッキを持っている。
「お前は......俺を追いかけてた国警だな...一人か」
男は声を少し低くしながら言った。
どうやらブルーアイズを警戒しているようだ。
暫く辺りを観察した男は、誰もいないと踏んだのか動きを止める。
再びリニアの方を向くとニヤリと笑った。
「どうやら仲間は助けに来ないらしいな?」
「一人で十分ですんで」
リニアの言葉に顔をしかめた男は今度は盛大に笑った。
「ハハハハハ!そういうのなんていうか知ってるか?負け犬の遠吠えって言うんだぜ?」
げらげらと男の笑い声が続く。

「そういうあなたこそ、負け犬の遠吠えですか?」

リニアは皮肉たっぷりな口調で言う。

「お嬢ちゃん、言葉の意味わかってんのかなぁ?」
男はリニアの正面に周る。
「確かにある組織に入っただけで指名手配になって、一人逃亡生活に勤しんでたわけだが......」
男は言葉を切る。
「負け犬なんかと一緒されてたまるかよぉぉおお!!」
男はステッキを振りかぶりながら雄叫びを上げる。
「負け犬め」
リニアはそう吐き捨てた。

次の瞬間、夜空には赤いものが散った。


*この物語はそめちめ(@sometime1209)の物語と同じ世界のお話です。
    久しぶりの更新な気がします。
    感想とか貰えると嬉しいです。



「ディザスター王国 4.5話②」

ディザスター王国のとある高級ホテルの一室に一人の女がいた。
堂々としたその美しい風貌は女王を連想するほどである。
そんな女は今、城下町を見渡せる程大きい窓ガラスの前でワインを片手に座っていた。
「あー......暇暇ぁ〜」
女は着ているバスローブをヒラヒラさせながら呟く。
足を上げた反動で下半分が翻る。
しかし女は気にしない。
何故なら部屋には自分一人しか居ないからである。
忙しい普段なら嬉しい限りなのだが、流石に4,5時間も何もしないというのは多忙な彼女とっても退屈なものである。
無意味な時間が流水の如く過ぎて行った。


魔力式時計が「チーンチーン」と音を鳴らす。
時刻は7時。お家大好き主義のディザスター国民は全てが既に帰宅している時間である。
故に普段の夜は人っ子一人居ないのが当たり前なのである。あくまで普段の話だが。
女は立ち上がり、窓から町を見下ろす。
案の定人は一人もいなかった。

女はニヤリと意味ありげな微笑を浮かべる。
月明かりがその顔を青白く照らす。

「司祭様、ご報告があります」
暗闇から突然声が響く。
直後に「ガタンッ!!!」という音が響いた。
女が椅子から落ちた音である。
そして女の後ろには整った顔立ちの男がいた。
175cmくらいの男は、気味の悪いくらいの笑みを浮かべている。

「ブヘアッazwqlia......」
「何語ですかそれ」
あまりの驚きに驚くほど呂律が回っていない、いや既に言葉すらも発することができていない女に、男は笑顔で言った。
「お、お前......いつから居るんだ......?」
女は引きつった顔で男に聞く。その声は震えていた。
「1時間くらい前からですから、司祭様がご入浴なさる前からですね」
「......」
男の発言に女は顔を赤くする。そして微かに体が震えていた。
それを見ても男の表情は変わらない。
笑顔である。

「それにしても司祭様があんな可愛いらしいpant((」
男が全てを言い終わる前に壁へとめり込んだ。
「グボァッ!」という微かな断末魔とともにバキバキッと木の割れる音が響く。

無論女の拳のせいである。

ワナワナと震えながらも女は拳を突き出し続ける。
その華奢な体からは考えられない力が加わり、浴室と寝室を区切る壁が完全に壊れた。
そしてそのまま寝室の壁にめり込む。

「部屋に入る時はノックをしろよぉ!!!」
と女は捨て台詞を吐く。その息は荒い。

息が整うと、女は先ほどの椅子に再び腰を下ろした。
「で?何?早く言ってよ」
女は男を催促する。
それに促されるように男はむくりと壁から頭を出した。頭から血がでているが笑顔である。
キョトンとした顔で女の方を向く。
「パンツの話ですか?」
「違う!!辞めろォオオオオ!!」
間髪を入れずに女の叫び(心の)が入る。
そして再び男はめり込む(壁に)

「報告だよ!!報告!!」
女は必死な声で言った。
男はようやく「思い出した!(笑顔)」というように口を開く。
「国際警察が動き出したようです」


「ふーん...」
「あれ?思ったより反応が薄いですね...」
男は首を傾げる。
「そりゃあ、そろそろ動くと思ってたし...」
「その割りにバスローブですか...」
「うっさい!!」
そういうと女は洗面所に駆け込む。
「ガコンッバゴンッドスーン!!」というが響いた後、女は着替えを終えて出てきた。
その服は魔道服をカジュアルにしたような、今時なファッションであった。
「じゃ、そろそろやりますか」
「はい、そうですね」
そう言うと男は女から距離をとる。

女は深呼吸をすると、手を前に合わせ意識を集中する。
すると、その手から何やら膜のようなものが生まれ、一気に膨らみ消えた。
見えなくなった、という方が正しいかもしれない。

「ふぅ......」
女は一息つくと手を放す。
その手からヒラヒラと紙が落ちた。
f:id:chikoclass:20131116180701j:plain
女はそれを足で踏んでくしゃくしゃにした。

「......」
男は笑顔のまま何も発しない。
どうやら女の指示を待っているようだ。
「だいたい場所の目星はついてるんでしょうね?」
「もちろんですよ」

雲が月を隠し、束の間の闇が訪れる。

「さてと、高みの見物といきますか」
女は言う。

「了解しました」
男は言った。
 
次の瞬間、彼らの姿は消える。


彼らのいた場所には一枚の紙が落ちていた。
「Allium(アリウム)」

それが彼女の名前である。


*この物語はそめちめ(sometime1209)と同じ世界で進行している物語です。
今回は①があまりにも短かったので2話同時に挙げました。
いつも通りのクオリティですが、どうぞよろしく。
感想いただけるとうれすぃーです。






「ディザスター王国 4.5話①」

時刻は午後5時30分。
お家大好きなディザスター国民はそろそろ家に帰る時間である。
別にディザスター国民ではないリニアも宿へ戻ってきた。

部屋に入るとブルーアイズがベットの上に座っていた。
既に支度を終えているらしく、P.Pの画面を見つめている。
リニアが帰ったことに気づいたブルーアイズは左手を挙げて「おかえり」と言った。
しかし、その顔に昼間のような穏やかさはない。

「何かあったんですか?」
リニアはブルーアイズに聞く。
するとブルーアイズは画面から顔を上げると「面倒なことになった」とジェスチャーで表した(気がした)。
気になったリニアもP.Pのデータフォルダを開いてみる。
画面にずらりと並んだ未開封メール(資料)の中から今回の捜査資料を開いた。
データのサイズが小さいのか、メールは簡単に開く。

顔写真と共に詳細が表示される。
顔写真が増えてターゲットが増えたこと以外はあまり収穫は無かった。
(ま、確かに面倒なことになったなぁ......)
全てを読み終えるとリニアはP.Pをポケットにしまう。
自分のバッグを持って洗面所に入ったリニアは、一度スカートを脱ぎ、ナイフなどが付けられたベルトを太ももに巻いた。
「Remove」、とって部分にそう彫りこまれている拳銃を出すと幾つかのマガジンと一緒にポケットに放り込んだ。
簡単だがこれで準備は完了なのである。

洗面所を出るとブルーアイズは既に玄関に居た。
リニアが出てきたのを見たブルーアイズはドアを開け、外に出る。
それを追うようにリニアも外へ出た。
前の通りの人通りは少ない。あと30分もしたら完全に人がいなくなりそうだ。
ポケットに手を突っ込んでいるブルーアイズはリニアの方を向いた。
「めんどくさいけど、行きますか」
「アイアイサーッ!」
「仕事...だからな...?」
「イエッサー!!」
f:id:chikoclass:20131116180549j:plain
緊張感のない同僚に多少不安を感じるブルーアイズ。


ほんのりと明るい空には金星の光が輝いていた。


「ディザスター王国 ④」

ちょうどブルーアイズがG.G(ゲロガール)と出会った頃、リニアはベットの上で目を覚ました。
抱きしめている枕は何故か破けており、中から羽が出ている状態だったがリニアはそれを気にせずベットから起き上がる。
ふわぁぁ...とあくびを一つ。
ボーッとする頭で部屋を見渡してみたが、ブルーアイズの姿はない。
その代わり、ブルーアイズが寝ていた(らしい)ところに紙切れが落ちていた。
その紙には「出てくる」と書かれている。
「『出てくる』......」

手紙を読んでリニアは自分が置いていかれたことを知る。
暫く黙っていたリニアだが、気持ちを切り替えたのか紙をゴミ箱に投げ捨てると文句を言いながらも支度を始めた。
(あの野郎...一人早起きしやがって.......ブツブツ......)
こうしてリニアの一日が始まった。

太陽はすでに真上から少し傾いた位置にあった。



宿の主人に鍵を預けてリニアは外の大通りに出る。
予想以上の人の多さに少し驚いた彼女だったが、ここが城下町であることを思い出し一人納得した。
道路の横にある柵の向こうには町が広がっている。
吹き抜ける風が彼女を優しく包んだ。
こんなに平和な国に来たのは久しぶりだ。せっかくなので少し町を見て回ることにした。

さぁて...どこ行こっかな〜...そう思った時である。ガタイのいい男がリニアの前方を塞いだ。
「よぉねぇちゃん......俺らと遊ぼうぜ」
と男はタオルに隠した何やらとんがった物をリニアに突きつけながら言った。
何やらとんがった物はリニアの脇腹を突つく。
なんだただのゴロツキ...か......、小声でボソッと言ったリニアは何を思ったのか両手を胸の前に寄せてガクガクと震え出した。その顔には涙が浮かんている。
 その表情を見た男はニンマリと笑ってリニアの肩に手を回し、路地裏へと誘導した。
(どこの国にもいるんだよなぁ...こういう輩...)
心の中でリニアは再びブツブツ文句を言い始める。今日は運がない気がする...。
実際に今日は既に二回もついてないことがあった。

男に連れられて入った路地裏には仲間と思われる男達が5、6人居た。
全員片手に鈍器を持っている。普通の人なら怯えるばかりで何もできないだろう。しかし彼女は国際警察であり、その中でも化け物じみた「Remove」のメンバーである。
こんなことでは動じない。
リニアは先程から続けていた演技をピタリとやめる。
そしてニッコリ笑った。
偽りの笑みである。

流石におかしいと思ったのか、男のうちの一人がリニアに近づく。
「さぁて...どうしようかな〜」
今度は周りの人の耳にも届くくらいの音量で呟く。
その言葉が癇に障ったのか知らないが、男たちの顔に青筋が浮かぶ。
「バキッ!!」
男の一人が壁を叩いた。
それを合図に男たちは武器を構える。
リニアに一番近い男が鈍器を掲げて襲いかかろうとした時だった。
リニアの感覚が殺意を感じ取る。
(敵....!?)
とっさに防御体制に入ろうとした彼女の視界を何か人影が横切った。
ブォン...!!という風の音が耳元で鳴り響く。
(!!?)
神経を張り詰めながらリニアは後ろを向く。
左手が武器を取るべくスカートのしたに入る。
ひゅっと銃をケースから抜き、構えようとした次の瞬間にだった。

轟......!!! 爆発音にも似た轟音とともに男達が宙に舞う。

そしてドスンと地面に落ちてそれっきり動かなくなった。
(.....!?)
状況がうまく掴めないリニアは呆然とその光景を眺めていた。
すると向こう側から人が歩いてきた。
ツンツン頭で右手に剣を持った男......服装からして兵士だ。
その瞳からはかすかに殺気を感じる。

右手に持っていた剣を肩にかけると、先程とは一変した笑顔でリニアの前に立った。
「お怪我はありませんかお嬢さん?」
呆然としていたリニアはハッと我に返ると、大丈夫というように首を横に振った。
「ええっと...その拳銃は...?」
リニアの手元に視線を落とした兵士は少し低い声で質問した。
「あーこれはそのー...私、こういう者です」
リニアは慌ててポケットからP.Pを出し、警察であることを証明した。
「ああ、これは失礼を...国警の方でしたか」
再び元のトーンの声になり、兵士は背筋を伸ばした。
鎧がガタガタと音を立てる。
その胸元には兵士の証であるエンブレムが、刻まれていた。
「あなたはこの国の兵士さんでしたか、先程はありがとうございました」
とリニアは形ばかりだがお礼を述べた。
それに対し兵士は「兵士として当然のことを((ry」というありふれた台詞をいった。
流石ディザスター王国...兵士のレベルがここまで高いのか......、一人感心しているリニアを傍らに兵士は両手いっぱいに男たちを担いだ。
男たちは唸りをあげているが、動かない。
どうやら気絶していただけのようだ。
「では、また何かあったら呼んでください」

兵士はそういうと男達を担いだ状態で路地裏を出て行った。

兵士の瞳からは先ほどとは違う、使命感や寂しさが感じられた。


(何だったんだろう...)
そう思ったリニアだったが、まぁいいかというように兵士とは反対方向に歩き出す。

観光の続きをせねば。
リニアの頭の中は既にそのことしか考えていなかった。


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暫く観光を楽しんだ後だった。
自分の額にボフッという衝撃が走る。
そのせいで少し後ろに飛ばされたリニアだったが、なんとか堪えた。
(よそ見し過ぎたなぁ......)
そう思いながらぶつかった相手を見る。
黒髪のコートを着た少年だった。背中にはぐでっとした少女を背負っている。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
いつもよりワントーン高い声でリニアは言う。
「ん?あぁ、俺は大丈夫だよ」
とその少年は言った。
「あなたもですけど......」
「ああ、この子か」
少年は少女を見ながら言った。
幾ら無愛想なリニアでも、歳が同じくらいの少女が異常にグッタリしていることに疑問を感じた。
(もしかして病人だったのかな......?)
そう思うと少々不安になる。
(人さらいか......?いや、流石に昼にそれはないか......)

「あぁ、はしゃぎ過ぎて疲れてるんだよ」

リニアが不安になっているのを察したのかは知らないが、少年はあっさりと答えた。
(なるほど......)
一般的な回答に納得しかけた彼女だが、ここで疑問が生じる。
何をしたらそこまで疲れられるのだろうか?
「うぅ......」
すると突然少女がうめき声を挙げた。
どうやら寝ていたところをさっきの衝撃で起こしてしまったらしい。
頭のアホ毛がピクリと動く。

(そうだ!)

その少女を見てリニアの頭にあるアイデアが浮かぶ。
彼女は迷わずそれを実行した。
「お詫びといってはなんですが、電流による疲労回復処置をしましょうか?」
リニアは特殊な種族出身で電流を操ることができる。実際ブルーアイズにも何度か試したことはあった。今回はこれを実践してみる。

少年は驚きも怪しがりもせず、「どうする?」と一言彼女に聞いた。
すると「お''ね''か''い''し''ま''す''......」と血をはう老女のような声が聞こえてきた。

リニアは珍しく国警の支給品の手袋を右手にはめると、大きく深呼吸した。
意識を集中し、微弱な電流をその少女に流す。
(ジリリリリリリリリリ......)
かすかな赤みを帯びた光は少女の体の中を循環する。
もう少し流せる......、そう思ったリニアは電流を一段階あげようとしたその時だった。
「ストップ」
勢いよく少年の手がリニアの手を掴んだ。
「!?」
予想外の出来事に驚いたリニアは反射的に少し強い電流を流してしまった。
「バリリリリリッ!!!」
先ほどとは一変して今度は紙を引き裂くような音が響く。
赤い光とともに電流は少女の体表を勢いよく流れた。

沢山の静電気が生じる。

それによって少女の髪は雷雲のようにボンバイエしていた。

「はは......」
リニアは笑った。
「雷雲みたいだね......」
少年も笑顔で少女を突つく。
「ゔ...ゔ......」
微かな嗚咽を漏らす少女の目は涙目だった(ほとんど泣いていた)。
ダメージが大きいのか、彼女は少年の背中に顔をうずめた。

(......もしかして黒歴史作っちゃったかな......)
そんな罪悪感を覚えながらリニアはあることに気づく。
右手から流している電流が消えている。
自分で止めた覚えはない。それに流している感覚もある。
しかし、電気の音がしない。
ではなぜか、リニアは少年の方を見た。
少年の手は微かに赤く光っている。
(電流を...変換している......!?)
じっと手を観察していると、視線に気づいた少年は手を離した。

(この人一体何者なの......?)

純粋な疑問が浮かぶ。しかし答えがでることはない。

暫くポカンとしていたリニアだが、はっと我に帰ると左手で少女の髪を触る。
するとたちまち髪に溜まっていた静電気は消え、もとの状態に戻っていった。

「本当にすいませんでした......失敗してしまって......」
リニアは素直に謝る。
「いや、俺も驚かせちゃったのもあるし......」
少年はぎこちない笑みを浮かべる。
少女はいつの間にか寝てしまったらしく、寝息を立てている。

「じゃあ僕たちそろそろ行くね、ありがとう」
少年は言った。
「いえいえ」
リニアが軽く会釈をすると少年と少女は立ち去っていった。
少年達が見えなくなるとリニアは再び観光を再開した。




城の周りを一周し終えると、太陽はもう既に沈みかけていた。
日が沈んだらおそらく敵は動き出す......昨日のブルーアイズの言葉を思い出したリニアは宿への帰路についた。




*この物語はそめちめ(@sometime1209)の物語と同じ世界の物語です。
今回はやたらと長くなり、いつにも増してぐちゃぐちゃです。
次回あたりからいよいよ戦闘が始まるかもしれません( ^ω^ )