G軍曹の書斎

小説です。

「ディザスター王国 ⑤」

すがすがしいほど美しい夜空が広がるディザスター王国。
静まり返った街並に、今日は人影があった。
リニアである。
30分ほど前にブルーアイズと二手に別れた後、リニアは城の正面へ向かっていた。
ちなみにブルーアイズは城の裏手にまわっている。

完全に夜になったため、太陽光を軸にした探査魔法の効力は切れてしまっている。
故にここからは自力で探すしかない。

(なるべく早く見つけないと......)
そう思った時だった。
周りの電磁波を乱す不快な感覚がリニアを襲う。
(......!!)
彼女はこの感覚を知っていた。
世界には微弱ながら磁場などが絶えず存在し、あらゆる物体の影響で変化する。
その中でも特に変わった、法則が通じない変化をするものがある。
すなわち魔力。
彼女は過去の経験から、それを感じ取ることができた。

リニアは足を止めて周りを見渡す。
魔力が使われた(リニアが感じ取れるくらいの距離で)ということは敵が行動を始めた証拠である。
しかし敵の影はない。

説明できない感覚が今度は殺意を感じ取った。
すぐさまスカート下から拳銃を抜こうとする。
「動くな」
突然背後から声がした。
銃を抜こうとしていたリニアはいきなりの事に スカートの下に手を入れている状態で止まる。
前方にあった窓ガラスには自分ともう一人、マントの男が映っていた。
その手には細い刃物がついたステッキを持っている。
「お前は......俺を追いかけてた国警だな...一人か」
男は声を少し低くしながら言った。
どうやらブルーアイズを警戒しているようだ。
暫く辺りを観察した男は、誰もいないと踏んだのか動きを止める。
再びリニアの方を向くとニヤリと笑った。
「どうやら仲間は助けに来ないらしいな?」
「一人で十分ですんで」
リニアの言葉に顔をしかめた男は今度は盛大に笑った。
「ハハハハハ!そういうのなんていうか知ってるか?負け犬の遠吠えって言うんだぜ?」
げらげらと男の笑い声が続く。

「そういうあなたこそ、負け犬の遠吠えですか?」

リニアは皮肉たっぷりな口調で言う。

「お嬢ちゃん、言葉の意味わかってんのかなぁ?」
男はリニアの正面に周る。
「確かにある組織に入っただけで指名手配になって、一人逃亡生活に勤しんでたわけだが......」
男は言葉を切る。
「負け犬なんかと一緒されてたまるかよぉぉおお!!」
男はステッキを振りかぶりながら雄叫びを上げる。
「負け犬め」
リニアはそう吐き捨てた。

次の瞬間、夜空には赤いものが散った。


*この物語はそめちめ(@sometime1209)の物語と同じ世界のお話です。
    久しぶりの更新な気がします。
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