G軍曹の書斎

小説です。

二章 「プロローグ」

ディザスター地方上空に一機の飛行機が飛んでいた。機体は黒く塗装されており、エンジンに消音処理をしてあるのか静かに飛行している。
時折、雲の間から顔を覗かせる月の光を飛行機は怪しげに反射する。

『あと5分程でポイントに到達します』
機体の中でスピーカーを通じて、アナウンスが流れた。そのアナウンスで中で座席に座って居た男達が準備を始める。
「ねぇ、本当にそんな格好で降りんの?」
同じ機体に乗っていた一人の女が言った。女は座席で足を組みながら、音楽を聞いている。全体的にラフな格好で、髪は一部を赤く染めている少し場違いな女だ。
「恥ずかしくないの?そのランドセル...」
女は更に付け加えた。
女が言っている格好とは全身を耐衝撃スーツに黒いランドセルの様な物を背負った格好のことである。
「これはランドセルではありません。降下補助装置です」男の一人が反論する。
「恥ずかしくはないです」
「でも、降りるだけならパラシュートでいいじゃん」
「この装置は高速落下と正確な着地を可能にした最新のものなんです。パラシュートなどとは比べられませんっ!」
女の言葉にスーツの男は食ってかかる。
「すごいんです」
一方女はへ〜、といった様子で座席に寝転がっている。その手にはP.Pが握られていた。
「熱弁中悪いんだけどさぁ、ポイントだよ」
そう言って女は後方を指差す。
大型のハッチが開き始めていた。
『降下ポイントです』
機内に再びアナウンスが流れた。
耐スーツの男達は今一度身なりを確認すると、ハッチの前に並んだ。
「それでは只今よりミッションを開始する」
スーツの男達の中で、リーダーらしき存在が言った。
「第三部隊、降下開始!」
その言葉を合図に、男達は次々とハッチから飛び降りる。
「展開!」
直後に男達の背負ったランドセル(降下補助装置)が開き中から羽が出現した。
カラスのような羽である。
そして装置に着いていたエンジンに火が灯ると部隊は闇の中に消えた。
「...あれ本当に着陸できんのかな...」
ハッチから下を見下ろしながら女は呟く。
「さてと、私も行くかね」
そう言うと、女は一歩前に踏み出す。
機体から飛び出した女は、猛スピードで急降下していく。
「うひょぉぉおおおおお‼︎」
夜空に女の声が響く。
その間も急降下は続く。
女は着陸補助装置はおろか、パラシュートもつけていない。
このままだと確実に女は死ぬ。
しかし、そんなことは気にしていない、というように女は両手を広げた。
その両手から赤い光が放たれる。

炎だ。

炎は徐々に火力を増していく。
「3....2...1...‼︎」
次の瞬間、女の両手から火の玉が放たれる。
それは放たれるや否や、爆発した。
豪ッ...!!!という音と共に爆風が周りに広がる。
女はその爆風で急降下のスピードを緩めると、とあるホテルの窓辺に降り立った。
部屋の中にはビジネススーツを身にまとった4人の男が呆然と立ち尽くしている。
「ちょいと派手だったか...な...」
そう言いながら、女は視線を男たちに戻す。

「さぁ、始めますか」
女は不敵な笑みを浮かべた。
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炎が 窓を貫いたのはそれから間も無くのことだった。