G軍曹の書斎

小説です。

「ディザスター王国 4.5話②」

ディザスター王国のとある高級ホテルの一室に一人の女がいた。
堂々としたその美しい風貌は女王を連想するほどである。
そんな女は今、城下町を見渡せる程大きい窓ガラスの前でワインを片手に座っていた。
「あー......暇暇ぁ〜」
女は着ているバスローブをヒラヒラさせながら呟く。
足を上げた反動で下半分が翻る。
しかし女は気にしない。
何故なら部屋には自分一人しか居ないからである。
忙しい普段なら嬉しい限りなのだが、流石に4,5時間も何もしないというのは多忙な彼女とっても退屈なものである。
無意味な時間が流水の如く過ぎて行った。


魔力式時計が「チーンチーン」と音を鳴らす。
時刻は7時。お家大好き主義のディザスター国民は全てが既に帰宅している時間である。
故に普段の夜は人っ子一人居ないのが当たり前なのである。あくまで普段の話だが。
女は立ち上がり、窓から町を見下ろす。
案の定人は一人もいなかった。

女はニヤリと意味ありげな微笑を浮かべる。
月明かりがその顔を青白く照らす。

「司祭様、ご報告があります」
暗闇から突然声が響く。
直後に「ガタンッ!!!」という音が響いた。
女が椅子から落ちた音である。
そして女の後ろには整った顔立ちの男がいた。
175cmくらいの男は、気味の悪いくらいの笑みを浮かべている。

「ブヘアッazwqlia......」
「何語ですかそれ」
あまりの驚きに驚くほど呂律が回っていない、いや既に言葉すらも発することができていない女に、男は笑顔で言った。
「お、お前......いつから居るんだ......?」
女は引きつった顔で男に聞く。その声は震えていた。
「1時間くらい前からですから、司祭様がご入浴なさる前からですね」
「......」
男の発言に女は顔を赤くする。そして微かに体が震えていた。
それを見ても男の表情は変わらない。
笑顔である。

「それにしても司祭様があんな可愛いらしいpant((」
男が全てを言い終わる前に壁へとめり込んだ。
「グボァッ!」という微かな断末魔とともにバキバキッと木の割れる音が響く。

無論女の拳のせいである。

ワナワナと震えながらも女は拳を突き出し続ける。
その華奢な体からは考えられない力が加わり、浴室と寝室を区切る壁が完全に壊れた。
そしてそのまま寝室の壁にめり込む。

「部屋に入る時はノックをしろよぉ!!!」
と女は捨て台詞を吐く。その息は荒い。

息が整うと、女は先ほどの椅子に再び腰を下ろした。
「で?何?早く言ってよ」
女は男を催促する。
それに促されるように男はむくりと壁から頭を出した。頭から血がでているが笑顔である。
キョトンとした顔で女の方を向く。
「パンツの話ですか?」
「違う!!辞めろォオオオオ!!」
間髪を入れずに女の叫び(心の)が入る。
そして再び男はめり込む(壁に)

「報告だよ!!報告!!」
女は必死な声で言った。
男はようやく「思い出した!(笑顔)」というように口を開く。
「国際警察が動き出したようです」


「ふーん...」
「あれ?思ったより反応が薄いですね...」
男は首を傾げる。
「そりゃあ、そろそろ動くと思ってたし...」
「その割りにバスローブですか...」
「うっさい!!」
そういうと女は洗面所に駆け込む。
「ガコンッバゴンッドスーン!!」というが響いた後、女は着替えを終えて出てきた。
その服は魔道服をカジュアルにしたような、今時なファッションであった。
「じゃ、そろそろやりますか」
「はい、そうですね」
そう言うと男は女から距離をとる。

女は深呼吸をすると、手を前に合わせ意識を集中する。
すると、その手から何やら膜のようなものが生まれ、一気に膨らみ消えた。
見えなくなった、という方が正しいかもしれない。

「ふぅ......」
女は一息つくと手を放す。
その手からヒラヒラと紙が落ちた。
f:id:chikoclass:20131116180701j:plain
女はそれを足で踏んでくしゃくしゃにした。

「......」
男は笑顔のまま何も発しない。
どうやら女の指示を待っているようだ。
「だいたい場所の目星はついてるんでしょうね?」
「もちろんですよ」

雲が月を隠し、束の間の闇が訪れる。

「さてと、高みの見物といきますか」
女は言う。

「了解しました」
男は言った。
 
次の瞬間、彼らの姿は消える。


彼らのいた場所には一枚の紙が落ちていた。
「Allium(アリウム)」

それが彼女の名前である。


*この物語はそめちめ(sometime1209)と同じ世界で進行している物語です。
今回は①があまりにも短かったので2話同時に挙げました。
いつも通りのクオリティですが、どうぞよろしく。
感想いただけるとうれすぃーです。