G軍曹の書斎

小説です。

「ディザスター王国 ⑦」

リニアがマントの男と戦っている頃、ブルーアイズは城の前に一人立っていた。
一旦リニアと二手に分かれて国境付近に向かったブルーアイズだったが、特に何も無かったので戻ってきてしまったのだった。
かれこれ30分くらいは経っただろうか...、ブルーアイズは夜空を見上げる。
お家大好き主義のディザスターの人は早いうちに家に入ってしまうため、この国には街灯が少ない。
全くないわけではないが、必要最低限しか取り付けられていないようだ。
それが功を奏してか、この街の夜空は星で溢れている。

ブルーアイズは近くのベンチに腰を下ろした。
「リニアの方は見つけたかな?」
そう言うと、ポケットから「P.P」を取り出す。
アドレス帳からリニアの番号を呼び出すと、発信をタッチした。
風の音もない、完璧な静寂が支配していた空間に「P.P」の呼びたし音が一定の感覚で響く。
10コール程繰り返すと呼び出し音は止まる。
「『おかけになった電話番号に繋ぐことができませんでした。(エラーコードc2)』」
感情のこもらない案内音声とともに画面にはエラーコードやらなにやらが表示された。
どうやら、リニアは「P.P」に気づかなかったようだ。
もしかしたら宿に忘れたのかもしれないが...。

(あいつ......準備万端って言ってたよな......)
仕方がないのでブルーアイズはそれをポケットにしまう。
ため息をついた。
「ターゲットはお姫様を狙ってるもんだと踏んでいたが.....何も起こんないなー」
ブルーアイズは呟いた。
しかし、ブルーアイズはふと思った。
(そういえば、今お姫様を狙う意味はあるのか?)
よく考えてみれば、追われて逃げている最中に誘拐をするのはリスクが大きい。
誘拐に成功する可能性も低くなるし、何より逃走経路の確保が難しいからだ。
お姫様を人質にして逃走するにしても、それなら国民を何百か人質に取った方が楽なのではないか。

なら考えられる可能性は一つ。

最初から目的があってここに来た。

(俺たちは国境付近で奴を見つけて追いかけてきた、なら最初からここに来ようとしてたとしても......)
さらにブルーアイズは考える。
(確かこの国は魔女の国だったな...ならお姫様が『力』を持っていてもおかしくはないか.....)
ブルーアイズは城を見上げた。
その時だった。
彼の視界を黒い影が横切る。
(!?)

ドスッ...!!、直後に鈍い音が響いた。
「イッテーな...っくたあのクソ組織...話が違う...」

ブルーアイズは黒い影が飛んで行った(落ちて行った)方を見た。

そこには「P.P」で見た顔があった。

「あ」
「あ」
二人は声を揃えた。

落ちてきた男は明らかに動揺している。
「て、てめぇ....!!!き、聞いてやがったな!!殺す!ぶっ殺す!!」
男は懐から剣を取り出すとブルーアイズに斬りかかる。

直後戦いの火蓋は切って落とされた。







...というよくある展開も無く、この戦いはたったの5秒で終わった。

「死ねぇぇえええええ!!!!ぐぶァッ.!!!」
ブルーアイズに斬りかかった男は体をくの字に曲げた後、地面に打ち付けられた。
咄嗟の出来事に理解が追いついていない男はハテナマークを頭にいっぱい浮かべている。
そんなことは気にしないブルーアイズは能力を使って男の体を起こす。

「手錠をかけた方がいいのか?これ...」
そういいながらポケットの中で手錠を探す。
「て、てめぇ!!!国警か!!!」
ようやく頭が追いついた男は吠える。
「そうだよー。さぁいろいろ聞かせてもらおうか」
手錠探しを諦めたブルーアイズは男を見下しながら言う。

「ふざけんな!国警なんぞに話すことはない!!」
男がそう言った直後、男の横にあった壁に大きな穴があいた。
衝撃とともに鈍い音が響く。

ブルーアイズが能力を使ったのである。
ディザスター王国の王室魔法で強化された壁、それは普通なら傷がつかない代物だがブルーアイズは顔色一つ変えずに穴を開けた。
「.....え.....」
男は絶句する。
顔は徐々に青ざめはじめ、体は既に震えている。
そんな男を見たブルーアイズは低い声で言う。
「全部話せ」


完全に負けた男は、ブルーアイズの前で正座をしている。
先ほどのような勢いはない。
「で?、目的はなんだったの?」
「お、お姫様の誘拐です...」
ブルーアイズの問いかけにビクビクしながら男は答える。
「何のために誘拐すんの?」
「それはわからいっす、頼まれただけなんで僕たち...」

「で、他のメンバーは?」
「僕と、もう一人は雇われた奴がいるはずです」
俯きながらもしっかり答える男。

「で、お前らの組織はなんて名前だ?」
「え!さ、流石にそれは言えないでぐぶァッ!!」
静かな街にバァンっ!!という音が響いた。
ブルーアイズの拳が容赦無く男を襲う。
「い、言いますから!!(痛い...酷い...)えっと、確か『てぃーじあ(?)』です。ギリシャ語だったと...意味は知りませんが...」
男は言った。
(ギリシャ語でその発音って...『捨て駒』って意味なんだけど.....ま、いっか)

ブルーアイズは続ける。
「じゃあ、最後だけど」
ブルーアイズは一旦言葉を切った。
「この仕事を頼んだ奴らって誰だ?」
「...えっと確かリ、リ、リから始まる名前だった気がするん」
男が名前を言おうとした時だった。

ブルーアイズは背後に殺意いや、それに似た何かを感じた。

ブオオオオオオオン!!!、どこからか音が近づくのを感じた直後だった。
血しぶきが舞う。
「!!!」
ブルーアイズは男に駆け寄る。

正座していた男の胸には銃槍が空いていた。
既に意識は無い。
「ちくしょう!!」
ブルーアイズは銃弾が飛んできたであろう方角を見る。

(ちくしょう!!なぜ気づかなかった!!情報漏洩を防ぐためにいざという時の刺客がいる可能性だって考えられたのに!!)

ブルーアイズは歯ぎしりした。




そんな彼をあざ笑うように、風は再び吹き始めた。



*この物語はそめちめ(@sometime1209)が執筆している物語と同じ世界の物語です。
    今回はいつも以上に文が崩壊している気がします。
    アドバイスとかをもらえると嬉しいです。