G軍曹の書斎

小説です。

「ディザスター王国 ⑨」

あの事件から一夜が明けた。ディザスター王国にいつもと変わらない朝がやってくる。

外から聞こえてくた人々の声でブルーアイズは目を覚ました。時刻は午後10時。
傍らではリニアがスヤスヤと寝息を立てている。
一瞬その状況に違和感を覚えたブルーアイズだったが、取り敢えずベットから起き上がった。
昨日の労働のせいで体全体にまだ疲れが残っている。リニアもそのせいか、全く起きる気配がない。

昨日の戦闘...マントの男たちとの戦闘を終えたブルーアイズ達は、その後に急遽城へ呼び出されたのだった。要件は確か「王女誘拐事件」の犯人の取り調べ(だったと思う)。
一応国際警察である彼らもその事件を手伝わされたのだったが、ボロボロの騎士長(犯人)の取り調べや、...っぱいタンk...じやない、被害者のお姫様の事情聴取、現場の確認と、面倒な仕事のオンパレードだったのでいつも以上に疲労が溜まったのだった。
特に騎士長の取り調べはやたらと時間を食った。

そういったことがあったおかげで、本来すべき男達の戦闘で出した損害の報告ができなかったのである。故にどんなに疲れていても再び城へ行かなくてはならないのだ。
ブルーアイズはささっと顔を洗うと、上着を羽織って外へ出る。
一回大きく伸びをした後、城へ向かって歩き出した。

--- 五分くらい歩いた時だった。
不意に吹いた風が甘い香りを運んできた。
(何の香りだろう)
そう思いキョロキョロしていると、花屋が視界に入った。
(ま、多少の寄り道なら大丈夫だろう)
そう思ったブルーアイズは躊躇いもせずに花屋へ入って行った。

「いらっしゃいませ」
コスモスの髪留めをした美人の店員さんが明るい笑顔でそう言った。
ブルーアイズも軽く会釈をする。
店内は思っていたよりも広く、たくさんの種類の花が売られていた。
それぞれの花の容器のプレートに名前と花言葉が書いてある。
コスモス...調和、トリカブト...騎士道、ポインセチア...私の心は燃えている…。
いろいろな花を見て回っていると、目の端に青い丸い花が入った。
吸い寄せられるように彼は花に近づく。
(なんて名前だろう)
そう思い、プレートを探す。
しかし、この花の容器には付いていなかった。

「その花はストケシアっていうんですよ」
声に驚き振り向くと、先ほどの店員さんが立っていた。
ふふふっ、と笑った後、「お探し物はこれですね」といってプレートを置いて行った。
ブルーアイズはそのプレートに目を通すと、軽く笑みを浮かべた。
「これ、貰えますか?」


------ ブルーアイズが花屋に入った頃、リニアは目を覚ました。
人気がないことから今日も置いていかれたことを察した。
しかし、今日はどこへ行ったのかだいたいは検討がつく。
「別に起こしてくれていいのになぁ」そう呟きながらリニアは起き上がった。
自分が寝言で何を言っているのか知る由もない。
「走れば追いつくかな」
支度を終えたリニアはそうつぶやくと、部屋を後にした。



------ 話はブルーアイズに戻る。
花屋で4.5分時間を潰したブルーアイズは城門の前に来ていた。
入り口のところで入城手続きをとる。
すると、腰のあたりにビリッビリッという刺激が走った。
一瞬腰痛を疑ったが、どうやら違うらしい。
手足が何故か動かない。
(痺れてる.......!?)
喋ろうとして口を動かすと、「あがっ」という声が漏れた。
すると、痺れがなくなった。
振り返るとそこには予想通り、リニアが立っていた。
「また、置いて行くなんて...しかもお城に入れるいい機会に......」
リニアはむすっとしながら言った。
「別に悪気は無かったんだ」
そうブルーアイズは言い訳した。

そうこうしているうちに城門が開く。

「どうぞ」
入り口の騎士が言った。



--- 城の中は曲線の道と、直線の道が幾つも通った変わった風景が広がっていた。
雰囲気はまさしく「お城」であった。
「すごいですね...」
「そうだな...」
二人は言葉を漏らした。

少し進むと、今度は城の入り口が見えてきた。
もうすぐお昼であるせいか、兵士が集まっている。
(こういうところは災害の国とは思えないよね)
ブルーアイズはふと思う。横にいるリニアはリニアで城のあちこちを見物している。
「王室はこちらです」
見物に気を取られていたブルーアイズは、その一言で現実に戻る。
そこには磨き上げられた鎧をまとった騎士がいた。騎士が示す方向には、厳格な雰囲気漂うそろらしい扉があった。
ブルーアイズが確認したことを見ると記事は自分の持ち場へ戻っていく。
「じゃあこれ持ってて。行ってくる」
そういうと彼は花束をリニアに渡す。
「花束...ですか、わかりました。その辺で待ってますね」
そういうと、リニアは入り口へ走っていく。
ブルーアイズもそれを見送った。

「さて、俺も行きますかね」
そういうとブルーアイズもまた扉へ向かって歩き出したのだった。